整体院の売却相場(規模別)と企業価値の算出方法
事業承継を検討する際、まずは自院がいくらで売れるのか相場を知ることが重要です。詳しい相場と価値の高め方についてはこちらをご覧ください。
整体院・整骨院の事業承継やM&Aを検討する経営者向けに、売却相場や企業価値の算出方法、具体的な手続きの流れ、最新の補助金情報を網羅した総合情報サイトです。
事業承継を検討する際、まずは自院がいくらで売れるのか相場を知ることが重要です。詳しい相場と価値の高め方についてはこちらをご覧ください。
整体院の事業承継は、「後継者がいないから廃業するしかない」と諦める前に必ず検討すべき選択肢です。長年かけて築いた患者リスト、内装や施術ベッドなどの設備、育てたスタッフ、地域での評判——これらはすべて、廃業すれば消えてしまう一方で、事業承継なら価値として引き継がれ、対価に変わります。
近年は、介護事業者やフィットネス企業などが、ヘルスケア領域でのシナジーを狙って整体院・整骨院を買収するケースも増えています。買い手の裾野が広がったことで、「1店舗の個人経営だから売れないだろう」という思い込みは、必ずしも実態と一致しなくなりました。
一方で、整体院の事業承継には他業種にはない独特の論点があります。未消化の回数券という「隠れ負債」、国家資格の有無による手続きの違い、広告表現の法規制、そして何より「人」に価値が集中しているという構造上の弱点です。これらを知らないまま話を進めると、評価額が大きく下がったり、承継後にスタッフが一斉離職したりする事態を招きかねません。
本記事では、整体院の事業承継を検討する経営者に向けて、業界の現状から売却相場、企業価値の算出方法、具体的な手続きの5ステップ、整体院特有の注意点、そして2025〜2026年の最新補助金までを体系的に解説します。読み終えた時点で「自院はいくらくらいで、どのルートで、何から手を付けるべきか」の判断材料が揃う構成にしています。
整体院の事業承継が急増している背景には、「店舗数の飽和による競争激化」と「経営者・施術者の高齢化」という2つの構造的な圧力があります。この2つが重なった結果、体力のあるうちに第三者へ引き継ぐ判断をする経営者が増えています。
整体・整骨・リラクゼーション領域は、開業のハードルが比較的低い業種です。整体院に至っては国家資格がなくても開業できるため、新規参入が続き、同一商圏に複数の競合がひしめく状況が各地で生まれました。結果として価格競争が起き、1店舗あたりの収益性は以前ほど確保しにくくなっています。
同時に、開業から20〜30年が経過した院では、経営者自身が第一線の施術者であるケースが多く、体力面の限界が経営の限界に直結します。施術者としての引退時期と、経営者としての引退時期が同じになってしまうのです。
廃業を選択すると、以下のものが一度に失われます。整体院の事業承継を検討する価値は、この一覧を金額に換算してみると実感しやすくなります。
買い手にとって、既存の整体院を買収することは「時間を買う」行為です。ゼロから開業する場合、物件探し、内装工事、機器調達、スタッフ採用、集客と、黒字化まで平均して1年以上かかることも珍しくありません。既存院の承継なら、初日から売上とスタッフと患者がいる状態でスタートできます。
加えて、介護・デイサービス・フィットネス・美容サロン・接骨院グループといった隣接業種から見ると、整体院は既存顧客との親和性が高く、送客や人材の相互活用といったシナジーが描きやすい対象です。この「異業種からの買い手」の増加が、近年の成約件数を押し上げています。
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| のれん代(営業権) | ブランド力、患者リスト、立地、スタッフの技術など、帳簿に載らない無形資産の価値。譲渡価格に上乗せされる |
| MBO(Management Buyout) | 経営陣や従業員が事業を買い取り経営権を取得すること。整体院では院長やチーフへの承継を指す |
| デューデリジェンス(DD) | 買い手が売り手の財務・法務・ビジネス面の実態やリスクを詳細に調査する買収監査 |
| 受領委任払い | 整骨院において、患者が自己負担分のみを支払い、残りの療養費を柔道整復師が代わりに請求する制度 |
| PMI(Post Merger Integration) | M&A成立後の経営統合プロセス。スタッフの意識合わせや施術メニュー・システムの統合を行う |
整体院と整骨院は、法的な位置づけがまったく異なり、事業承継の難易度と手続きも変わります。結論として、整体院は「誰でも買えるが、価値の裏付けが弱い」、整骨院は「買い手が限られるが、保険収入という安定基盤がある」という対照的な性質を持ちます。
整骨院(接骨院)は「柔道整復師」の国家資格が必須で、施術所の開設届が必要です。一方、整体院は法律上の施術所には該当せず、無資格でも開業・経営ができます。この違いが、そのまま承継時の論点になります。
| 比較項目 | 整体院 | 整骨院(接骨院) |
|---|---|---|
| 必要な国家資格 | 不要(民間資格のみでも可) | 柔道整復師が必須 |
| 保険適用 | なし(全額自己負担の自由診療) | 骨折・脱臼・打撲・捻挫などで適用(受領委任払い) |
| 行政への届出 | 原則不要(保健所の施術所開設届は不要) | 施術所開設届が必要 |
| 承継時の買い手の範囲 | 法人・個人を問わず広い。異業種参入も可能 | 有資格者の確保が前提となり範囲が狭まる |
| 使える広告表現 | 「治療」「マッサージ」「診療」などは使用不可 | 法令で認められた範囲内で表示可能 |
| 収益の安定性 | 単価は高いが景気・集客力に左右されやすい | 保険収入が下支えする一方、療養費改定の影響を受ける |
| 承継手続きの複雑さ | 比較的シンプル | 資格者配置・届出の再手続きが必要で煩雑 |
整体院の事業承継における最大のメリットは、買い手に資格要件がないことです。介護事業者、フィットネス運営会社、美容サロン、あるいは異業種の個人事業主でも取得できるため、母集団が大きくなります。売り手から見れば、それだけ買い手が見つかる確率が上がるということです。
ただし、資格がいらない=参入障壁が低いということでもあります。買い手は「この院でなければならない理由」を探しています。立地、リピート率、指名の分散度合い、独自メニューといった再現しにくい強みを言語化できるかどうかが、評価額を左右します。
整骨院を承継する場合、柔道整復師である管理者を確保しなければ営業を継続できません。オーナー院長自身が唯一の有資格者である院では、承継と同時に営業できなくなるリスクがあるため、「オーナーが一定期間残る」「有資格者を新たに配置する」といった設計が必須です。
受領委任の取扱いについても、開設者や管理者が変わる際には所定の手続きが必要になります。保険収入の比率が高い院ほど、この事務手続きの空白期間が資金繰りに直撃するため、スケジュール設計を専門家と詰めておくべきです。
整体院の事業承継には、親族内承継・従業員承継(MBO)・第三者へのM&Aの3つのルートがあります。現金化を優先するなら第三者M&A、院の文化維持を優先するなら従業員承継というのが基本的な使い分けです。
| 比較項目 | 親族内承継 | 従業員承継(MBO) | 第三者へのM&A |
|---|---|---|---|
| 対価の受け取り | 少額または無償のことが多い | 分割払い・低額になりやすい | 市場価格での一括受領が基本 |
| 引き継ぎのスムーズさ | 高い(事前準備期間が長い) | 非常に高い(実務を熟知) | 中程度(PMIが必要) |
| 患者離れのリスク | 低い | 低い | 中〜高(施術者交代の場合) |
| スタッフの動揺 | 小さい | 小さい | 事前説明の質に依存 |
| 資金面の障壁 | 相続・贈与税の負担 | 買い手側の資金調達が最大の壁 | 買い手が用意するため低い |
| 経営者保証の解除 | 交渉が必要 | 交渉が必要 | 引き継ぎ・解除しやすい |
| 準備期間の目安 | 3〜10年 | 1〜3年 | 6ヶ月〜1年半 |
子どもや親族が施術者として働いている場合、最も自然な選択肢です。ただし整体院の場合、「親と同じ技術・接客ができるか」が患者の定着を決めるため、承継予定者を数年かけて主力施術者に育てるプロセスが欠かせません。
税務面では、個人事業なら事業用資産の贈与・相続、法人なら株式の移転が論点になります。事業承継税制の特例措置には計画提出期限や適用期限が設けられているため、活用を検討する場合は要件と期限を早い段階で確認しておく必要があります。
院長やチーフを務めるスタッフへの承継は、患者・スタッフの動揺が最も小さい方法です。技術も接客スタイルも引き継がれるため、承継直後の売上ダウンが起きにくいという実務上の利点があります。
最大の課題は資金です。個人が数百万〜数千万円を用意するのは容易ではないため、以下のような組み合わせで設計します。
「後継者がいない」「引退後の生活資金を確保したい」という目的なら、第三者M&Aが最も合理的です。複数の買い手候補を比較できるため条件を引き上げやすく、対価も一括で受け取れるのが一般的です。
整体院のM&Aでは、株式譲渡(法人の場合)と事業譲渡(個人事業・一部店舗のみの譲渡)が主な手法になります。個人経営の整体院では事業譲渡が中心となり、この場合はスタッフの雇用契約・テナントの賃貸借契約・リース契約などを個別に巻き直す必要がある点に注意してください。
可能です。整体院は開業に国家資格が不要なため、買い手も無資格の法人・個人で問題なく、介護・フィットネス・美容などの異業種からの参入も少なくありません。むしろ資格要件がないぶん買い手の母集団が広く、マッチングの機会は整骨院より多いケースもあります。ただし、承継後に「マッサージ」「治療」といった表現を使えない点は、看板やホームページの引き継ぎ時に必ず確認してください。
つく可能性は十分にあります。買い手にとっては、新規開業に必要な物件取得・内装工事・機器調達・集客のコストと時間を圧縮できることが価値になるためです。立地が良い、設備が新しい、一定数の患者リストがある、といった条件が揃えば、赤字でも譲渡は成立します。この場合の価格は、のれん代を乗せない時価純資産ベースや居抜き譲渡に近い水準になることが多くなります。
買い手とスタッフ双方の合意があれば引き継げます。株式譲渡であれば雇用契約は法人に紐づくためそのまま継続しますが、事業譲渡の場合は個別に同意を得て新たに契約を結び直す必要があります。いずれの場合も、経営者が変わることによる離職リスクは現実的な問題です。労働条件の維持を契約に明記し、正式発表前に主要スタッフへ個別説明を行い、買い手と直接話す機会を設けることで、離職率を大きく下げられます。
一般的には「時価純資産+営業利益の2〜3年分(のれん代)」という年倍法で試算し、そこから買い手との交渉とデューデリジェンスの結果を反映して最終決定されます。未消化回数券の残高、未払い残業代などの簿外債務、キーパーソンの退職リスクは減額要因になります。逆に、院長が施術に入らなくても運営できる体制、高いリピート率、代替の効かない立地は倍率を押し上げる要因です。
使えます。中心となるのが「事業承継・M&A補助金」で、専門家活用枠を利用すればM&A仲介手数料やデューデリジェンス費用、専門家への相談報酬の一部について補助を受けられます。2025年度からは小規模な売り手を支援する類型も新設され、個人経営規模の整体院でも活用しやすくなりました。注意点として、交付決定前に契約・支払いをした経費は対象外となるため、仲介会社との契約タイミングを申請スケジュールと合わせる必要があります。
引退予定の2〜3年前から動き始めるのが理想です。磨き上げに6ヶ月〜1年、買い手探しと交渉に2〜6ヶ月、DDとクロージングに2〜4ヶ月かかるため、逆算すると1年半は最低でも必要になります。加えて、体調悪化や急な事情で「明日から施術できない」となると、売上が急落して評価額が大幅に下がります。元気に営業できているうちに動き始めることが、最も価値を守る方法です。
資金不足は従業員承継で最も多い障壁ですが、設計次第で乗り越えられます。実務的には、金融機関の事業承継融資の活用、譲渡対価の分割払い(数年かけての支払い)、法人であれば株式を段階的に移転する方式、役員退職金と譲渡対価を組み合わせて全体の税負担を調整する方法などがあります。経営者保証をどう扱うかも重要で、金融機関と早期に協議し、経営者保証に関するガイドラインを踏まえた解除・不承継の可能性を探ってください。
可能です。M&Aの初期段階では、院名を伏せた概要書(ノンネームシート)のみを買い手候補に提示し、興味を示した相手と秘密保持契約(NDA)を締結してから詳細情報を開示する流れが標準です。知人や同業者に直接打診すると情報が広がりやすいため、秘密保持を重視するなら仲介会社やプラットフォームを経由するほうが安全です。スタッフへの告知タイミングも、契約書の締結状況に合わせて設計します。
整体院の事業承継は、「利益を上げる」「属人性を下げる」「リスクを先に開示する」という3点に集約されます。年倍法という評価方法の性質上、承継前の1年間の改善努力が2〜3倍になって対価に反映されるためです。
最後に、今日から確認できるチェックリストをまとめます。該当項目が少ないほど、準備の余地が大きいということです。
自院の価値を把握したら、次は実際の引き継ぎに向けた手続きを進めましょう。具体的なステップと注意点はこちらで解説しています。
専門家に依頼する際の手数料負担を軽減するため、最新の補助金制度を活用しましょう。2025〜2026年の最新補助金情報はこちらです。
整体院の事業承継を考えている方に向けて、後継者の探し方や引き継ぎの準備、手続きの進め方について役立つ情報を紹介しています。